高齢者の歯科治療

11. 検査等によって誤嚥の可能性が明らかになったら、誤嚥防止の訓練を始める。

    誤嚥防止の為の訓練
    検査等によって誤嚥の可能性が明らかになったら、誤嚥防止の訓練を始めると思います。しかし、現実の対応は、飲み下しやすい「軟食」への切り替えが優先されがちです。

    それは楽に食べられて栄養が採れるようにと云う配慮からですが、ベビーフードのような介護食や流動食を続けると、咀嚼により分泌される刺激性唾液の量が減少し、食物の咽頭への送りこみがますます弱まります。

    かつては、チューブに入っていた宇宙食も、最近は咀嚼するタイプになっています。これは「噛まないといけない」食物が消化管に刺激を与えて蠕動運動等の消化活動を活発にするため、効果的に栄養分が吸収されることがわかってきたからです。ところが、高齢者向けの介護食の多くが咀嚼の不要な軟食で、栄養吸収に問題が生じます。

    口から食事を摂れている人の中で摂食嚥下障害の兆候として共通しているのは「むせる」ことです。この段階で、きちんと飲み込めるような状態に戻しておかないと、咀嚼や嚥下が出来なくなり、口腔機能の廃用化が進むことになります。

    例えば、筋肉で云えば、足の筋肉や腹筋、背筋など、特に強い力を出せる筋肉は2週間使わないと30%機能が落ちるといわれていますが、2週間軟らかい食事ばかりしていると、咬合力が30%おちてしまうと云うことになります。加齢による咀嚼機能障害の場合でも、機能維持訓練など、支援できることはあります。

    今年の4月に介護保険の内容が改定され、経口維持加算の算定要件から内視鏡や造影剤での検査が廃止され、食事場面の観察が必要になりました。これにより、実際の飲み方、食べ方の指導がますます必要になってくると思います。

    加齢によって咽頭の感覚が鈍り、むせやすくなると、多くの高齢者は水分の摂取を減らします。喉が渇くという感覚も鈍くなり、さらにエアコンの乾燥した空気が拍車をかけ、口腔内はどんどん乾燥していくのではないでしょうか。

    特に高齢者の場合、温度を感じる感覚が低下傾向にあるので、周囲の人が気を配り、本人が喉の渇きを感じていなくても、一定量の水分や経口補水液などを飲ませることは必要と思います。

    また、高齢者の中には「エアコン」を嫌う傾向が強く、単なる窓開けや扇風機などでは屋内(家の中)に居ても起こる熱中症予防には、効果が低いと思います。エアコンに関しましては、温度調節も大事ですが、直接エアコンからの風が当たらないようにする工夫が、高齢者な方には大切気配りと思います。

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    武内 光晴

    武内 光晴

    武内デンタルクリニック 院長 歯科医師

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