睡眠時無呼吸症候群

2. 閉鎖型睡眠時無呼吸症(OSA)の有病率は成人男性で約3~16%、女性で約2~5%

    閉鎖型睡眠時無呼吸症(OSA)
    OSAに関する疫学研究はこれまでにもいくつかの報告があり、本邦における有病率は成人男性で約3~16%、女性で約2~5%とされています。

    終夜睡眠ポリソノグラフィー(Polysomnography:PSG)検査が行われている新潟県内11施設のOSA患者3.659人を対象とした調査では、気道の閉鎖による10秒以上の無呼吸や低呼吸の1時間当たりの回数である無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index:AHI)の値を基に重度を分類したところ、軽症(5≦AHI<15)が1.034人(28%)、中等症(5≦AHI<30)が934人(25%)、重症(30≦AHI)が1.701人‘47%)でありました。

    男性が女性の4.6倍と多く、男性は50歳代をピークとして30歳代から60歳代に集中し、女性では50歳代以降に急激に増加していました。男性では、加齢に伴う体重の増加とともに、喉や首まわりの筋力が衰えることもリスクを高める一因とされています。

    女性はホルモンの一つであるピロゲステロンに上気道大筋の筋活動を高める作用があり、OSAを発症しにくいとされていますが、閉経後にピロゲステロンの分必が低下することから、50歳代以降にOSA患者が増加すると考えられています。

    また、肥満度を表すBody Mass Index(BMI)が25以上の肥満傾向を示す患者さんは2.095人(57%)で、肥満の重度とともにAHIの重症度も上昇する傾向にあり、BMIがAHI増加の主要な因子でありました。一方、314人(9%)はBMIの低い痩せた患者さん(BMI<18.5)であり、OSA発症には他の因子の関与が考えられます。

    広く一般的に「太った人ほど、いびきをよくかく」などと言われることがありますが、とくに男性に関しては医学的にも裏付けがあるという事になります。総合的な健康管理面からだけでなく「いびき予防」の面からも肥満予防あるいはダイエットは大切の要因と言えるのではないでしょうか。

    肥満と閉鎖型睡眠時無呼吸症の関係
    肥満はOSAの発症に関与する重要な要因とされていますが、日本人のOSA患者では極端な肥満傾向を示す患者は少数であり、普通体重が多いとされています。種々の調査においても、肥満度は普通体重(18.5≦BMI<25)が全体の54.5%と最も多く、肥満2度以上(30≦BMI)の患者の占める割合は10.7%と必ずしも高くなかった。

    そこで、日本人男性OSA患者138人の重症度と年齢や肥満度ならびに骨格形態との関連について因子分析を用いて検討した結果、OSA患者の重症度に関与する因子として顎顔面骨格の構造的因子(小下顎、舌骨位置の低位、軟口蓋の過長)と肥満の2つの因子が独立して抽出されました。

    つまり、肥満の重症化はAHIの重症度も上昇させるが、肥満がなくとも下顎骨が小さく後方位にあるとOSAになりやすいということで、肥満よりもOSAの重症度への関与が大きいことを示していました。日本人を含む東アジア人では、欧米人などに比較して頭蓋底の前後径が短い短頭型が多いことから、軽度の肥満や小下顎でもOSAになりやすいのではないかと考えます。

    また、扁桃肥大を認める患者では、鼻呼吸障害が睡眠時に著明となり、重大な睡眠呼吸障害をもたらします。

    特に、小児OAS患者では扁桃肥大が原因であることが多く、扁桃肥大による鼻呼吸障害は、覚醒時には口呼吸で代償されるが、口の締まりがなく開咬や長顔を特徴とするアデノイド顔貌を呈するようになり、睡眠時の陥没呼吸による胸郭変形や慢性的な低酸素症に伴う精神遅滞、睡眠中の成長ホルモンの分泌低下に伴う低身長を引き起こすことが知られています。

    OSA患者に対する治療法としては、減量や側臥位睡眠などの生活習慣の改善とともに、保存療法や外科療法などが行われていますが、現在のOSA治療の主体は経鼻的持続陽圧呼吸療法(nasal Continuous Postive Airway Pressure:CPAP)や口腔内装置(OA)などの保存療法など、医科歯科連携による治療が行われいます。

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    武内 光晴

    武内 光晴

    武内デンタルクリニック 院長 歯科医師

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