歯とお口と健康

唾液活用の可能性

    メタゲノム解析の技術改革により、腸内細菌などの全体像が正確に把握できるようになり、ヒトの常在菌に関する解析が進んでいます。こうした中日本の大学を中心とする共同研究グループがヒトの口内細菌叢にも概日リズムが存在することを世界で初めて明らかにしました。

    細菌叢を一つの有機体として捉え、そのDNA情報から全体像を明らかにするメタゲノム解析の技術が開発されたことで、細菌の種類や数などを正確に把握できるようになりました。ヒトの常在菌に関する解析も進み、特に腸内細菌叢の変容(ディスバイオシス)が肥満や糖尿病、炎症性腸疾患、自閉症など、さまざまな疾患の発症と関連していることが徐々に明らかになり、関心が高まっています。一方、ヒトの常在菌は腸だけでなく唾液や皮膚など、いろいろな場所に生息しています。

    唾液中には、約700種類の常在菌が存在し、細菌叢を形成していますが、もともと唾液は無菌であるため、口腔内粘膜に生息する細菌が唾液に流れ込んでいりと考えられます。これまでの研究から、唾液細菌叢は腸内細菌叢に比べて食事や薬などの影響を受けにくい、個人間の違いが小さいといった性質を持つことが知られており、このことは腸内細菌叢とは異なる生理的な機能あるいは制御システムが唾液細菌叢に存在することを示しています。

    さらに、唾液細菌叢の変容は歯周病やう蝕だけでなく、炎症性腸疾患やリュウマチ、膵臓がんなどの全身疾患においても観察され、これらの疾患との関連性が指摘されています。

    2013年に共同研究グループが行った研究で、健康な人と炎症性腸疾患の人の唾液細菌叢は全く異なることが判明しており、このことから唾液細菌叢は疾患をはじめとする生体内部の生理的な変化に敏感に反応するのではないかと考えます。そこで、生体内部の生理的変化としてよく知られる概日リズム(サーカディアンリズム)に着目し、メタゲノム解析により唾液細菌叢の時間的な変化を調べるという興味深い研究が始まりました。

    武内 光晴

    武内 光晴

    恵比寿の歯科医院(歯医者)、武内デンタルクリニック 院長。

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